全身タイツでさわさわ②
第2話:凍りつくコメント
翌日の夜。いつものように自宅からインスタライブを始めていた。 「こんばんはー! るかぴよです! 今日は新作のメイドコスで配信しちゃいます♪」 明るい笑顔で手を振る。コメントが次々と流れる。「かわいい!」「今日の衣装エロいね」 るかはいつもの調子で受け答えながら、ポーズを取る。スカートの裾を軽く翻し、カメラに近づいたその時—— 画面の端に、一つのコメントが滑り込んできた。 「後ろに全身タイツが落ちてない?」
るかは一瞬、呼吸が止まった。心臓が激しく鳴り響き、視界が白くかすむ。背後のクローゼット扉が少し開いていることに、今さら気づいた。昨夜、興奮のあまり脱ぎ散らかした薄ピンクの光沢の全身タイツが、床にくしゃっと落ちていたのだ。照明の柔らかな光を受けて、生地独特の艶がうっすらと反射し、まるで生き物のように存在を主張している。
「え、えっと……!」
慌てて体を横にずらし、カメラの角度を急いで調整する。笑顔を無理やり貼り付けようとするが、頰が引きつるのが自分でもはっきりわかった。指先が小刻みに震え、声が上ずる。
「あはは、なんか変なコメント来たー! 無視無視! みんな、気にしないでね?」
コメント欄は一瞬ざわついたものの、すぐにいつものファンからの可愛い言葉が流れ始める。でも、るかの頭の中は完全にパニックだった。下半身が熱を帯び、太ももを無意識にぎゅっと閉じ合わせる。昨日、深夜に全身タイツを着込んで部屋の中をゆっくり動き回った時の、あのぴったりとした締め付け感が鮮やかに蘇ってきた。肌に吸い付くような滑らかな生地、軽い圧迫と解放が混じり合う心地よさ……。全身を包み込む感覚は、まるで自分自身を優しく抱きしめられているようで、日常のストレスから逃れられる特別な時間だった。
「みんな、今日のメイド衣装どう? もっと近くで見たい? このレースの部分、かわいいでしょ?」
必死に話題を逸らしながら、るかはスカートの裾をもう一度翻してみせる。声は明るく保とうとしているのに、胸の奥から熱い衝動が湧き上がってくる。配信を続けなければならないのに、頭の中はピンクのタイツのことばかり。早くこのメイド服を脱いで、タイツに包まれたい。さわさわと生地を肌に這わせ、鏡の前で自分のシルエットを見つめたいという欲求が、秘めた部分をじんわりと刺激する。心臓の音が耳に響き、頰が熱くなるのを抑えきれない。
配信中、るかは時折背後をチラチラと気にしてしまう。コメント欄にはもうその話題は出てこないのに、誰かが見たのではないかという不安が、甘い緊張感となって体を包む。全身タイツは彼女だけの秘密だった。誰にも知られたくないのに、どこかで理解してほしいという矛盾した想いも、心のどこかにあった。
30分後、配信を終了した瞬間、るかはベッドに崩れ落ちた。 「やばい……見られた……? 誰かにバレた……?」 震える手でスマホを開くと、DMの通知が一つ。 送信者:匿名アカウント。 本文:「同じ趣味の者です。突然すみません。僕も全身タイツが大好きで……あなたの配信、いつも見てます。」
恐怖と、奇妙な高揚が同時に胸を締め付けた。 秘密を知っている誰か。理解者。 るかの息が、熱くなった。
